厚労省よ恥を知れ!!法律を守れ!!/あまりの患者愚弄に怒り心頭/遂に寝た子が起きた!!/被害者の声をもっと聞け!!

精神疾患の患者たちは、総じておとなし過ぎます。何をされてもじっと耐えてしまう。精神病院に何十年閉じ込められても、運命だと受け入れてしまう。そんな姿を見ていて、取材している私の方が「なんで怒らないのか」「だから舐められるんだ」と苛立つことがよくありました。
厚生労働省はそんな患者たちを見下し、なめくさり、「どうせ何も言ってこない」と安心して無策を貫いてきましたが、目に余る愚弄の数々に患者たちの怒りが遂に爆発しました。2023年6月9日、身体拘束大臣告示の改悪阻止を目指す集会。雨まじりの平日にも関わらず、患者と支援者150人超が厚労省前に集結。次々とマイクを握って叫びました。
「厚生労働省は、自分たちに都合のいい意見しか言わない当事者(患者)だけを選んで、それで『当事者の意見を聞いた』と言っている。とんでもないことだ。今回の身体拘束大臣告示は改正などではなく、明らかに改悪の方向で進んでいる。屈辱的な身体拘束を受けた多くの当事者の声を聞け!」
厚労省前行動と、その後に行われた院内集会(衆議院第一議員会館)では、数多くの患者・支援者がマイクを握りました。その中の一部を紹介します。

屈辱的な身体拘束を受けた成田茂さんの話
「私は身体拘束を受けた体験があります。うつ病で入院していて、保護室という所に入れられました。そこは拘置所の独房と同じような部屋で、うつ病がもっと悪くなりました。何で俺はこんなところに入れられたんだろうと、気持ちがめちゃくちゃになったんです。それで床を叩いたら、自傷行為だから身体拘束をしますと言われ、ベッドを入れられて5点拘束されました。そして紙おむつをつけられた。かろうじて両手の親指が動いたので、頭にきたので紙おむつをビリビリに破きました。そして素っ裸の状態で身体拘束を受けたのです。男性看護師が見回りに来たので、なんで私がこんなことを受けなければいけないのかと聞いたら、『てめえが知ってんだろ』『てめえが考えろ』と、こういう言葉を言われました。これって病院ですか。病院は何をする所なんですか。病気やケガを治して命を守る所でしょ。患者が縛られて亡くなっているなんて、病院じゃないでしょ。こんなことがあっていいんですか。今日は役人とも会いましたが、厚労省の言っていることは通り一遍です。自分たちが選んだような当事者からしか話を聞いていないのに、当事者から話を聞いていますからと、そういうことしか言いません。もっと体験した人を入れて聞きなさいよ。そういう人たちから話を聞いてくださいよ」

違法な身体拘束で息子を亡くした大畠正晴さんの話
「息子が亡くなって6年半が経ちました。優しかった息子は戻ってきません。寂しい毎日を送っています。病院は何で身体拘束などしたのか、家族にも告げないで。一也を殺してしまったのは俺のせいだ、あんな病院に預けてしまったからだと、毎日悔やんでいます。一也の入院の原因は寝不足でした。以前に入院した時の先生は凄くやさしくて、元気に帰って来たので、また安心して預けてしまったのです。でも先生が代わっていて、預けて2週間で『亡くなりました』という電話。あんなに元気だったのになぜ、と体が震えて、病院に飛んでいきました。首におかしなアザがあり、納得できないので大きな病院で司法解剖をしてもらいました。死因は肺血栓塞栓症でした。一也はギターがとてもうまかった。でも今は、部屋に行ってもギターが鳴らない。寂しくてたまらない。息子は戻って来ません。でも身体拘束をなくすために少しでもお役に立ちたいと思って、金沢からやってまいりました」

杏林大学教授・長谷川利夫さんのスピーチの一部
「亡くなった大畠一也さん(当時40歳)が身体拘束をされた時のカルテには、検査などができないから身体拘束をするしかない、と書いてあったわけです。それはもう最高裁の判断で、そういう身体拘束はダメだとなったのです。ところが厚労省は、(最高裁の判断を)あえて全部塗り替えるような提案をしてきたのです。これを怒らずして、何を怒るんだ。絶対に許せない。その後、『治療が困難』等の医師の裁量を広げる文言を入れようとした厚労省は、この見直しの検討を野村総研に研究委託してしまいました。民間のシンクタンクに丸投げなんて、とんでもないことです。しかも、国会で追及されても研究メンバーを公開しません(終了後に公開)。議論も公開しません。そして今度は、身体拘束の『一時性』という要件に『必要な期間』という言葉をかぶせて、医師が必要と判断する限り身体拘束を続けられるような解釈を出してきた。これはひどい。あまりにもひどい。絶対に止めなければいけない」
※野村総研の関連は次の記事(2022年12月7日付、精神医療ルネッサンス)に詳しく書いています。

弁護士&精神障害当事者・佐々木信夫さんのスピーチ
「日本を背負う官僚諸君、聞こえているか。日本には日本国憲法がある。日本国憲法は何ていっているんだ。日本国憲法は、人間の人身の自由を保障している。なのに、なぜ病気であるという理由で縛られるのか。おかしくないか。世界の障害者運動でこういうスローガンがある。私たち抜きで私たちのことを決めるな。俺たちの言うことを、厚労省の諸君は聞いているか。聞いてないだろう。医療者は聞いているか。聞いてないだろう。障害者のことは障害者が決める。違うか。もうひとつ。民主主義とは何か。民主主義というのは、みんなのことはみんなで決める。しかし、今回の身体拘束大臣告示は誰が決めている。俺たちの言うことを聞いているか。聞いてないだろう。これが民主主義の劣化であって何であるか。私は法律家だ。日本国憲法には、法の支配という原則がある。今回の身体拘束大臣告示は、憲法の原則に従っているのか。裁判所の判例にも反する告示を決めようとしている。厚生労働省および医療者は法律を守れ。法律の支配を守れ」



撮影・佐藤光展