精神科診断に代わるアプローチ?/パワー&脅威&意味のフレームワーク「PTMF」とは/高いけど翻訳本が人気

みなさん、こんにピア!!

今回は、高いけど役立つ本をご紹介します。

精神医療があらゆる面で行き詰っていることは、みなさんご承知だと思います。心理的・感情的な苦悩を「脳の病気」と捉え、科学性に欠けるラベリングと投薬中心の医療でどうにかしようとする試みは、当初から無理があったのです。効かないだけならまだしも、精神医療が余計なことをしたためにかえって不調が長引き、医源病に苦しみ続ける人たちが次々と生まれました。科学的な診断法などないのに「一生治らない」と断定する愚かなレッテル貼りによって、患者はますます孤立して差別が強化されました。精神医療への不信感は、もはや抑えようがないほど世界中で高まっています。

私たちはどうすればいいのか。重要なヒントを提供してくれるのが、英国で臨床心理士として活動するメアリー・ボイルさんとルーシー・ジョンストンさんの共著「精神科診断に代わるアプローチ PTMF」(北大路書房、税抜き3800円)です。PTMF(パワー・脅威・意味のフレームワーク)を学んだ人が悩める人たちに問うのは、「どこが悪いの?」ではなく、「何が起きたの?」です。次のように問いかけていきます。

「どんなことがあなたに起きましたか?」(パワーは人生にどのように作用しているのか)
「その出来事はあなたにどのような影響を及ぼしましたか?」(そのことはどのような脅威をもたらしているのか)
「あなたはそのことをどのように理解しましたか?」(そうした状況と経験の意味はどのようなものなのか)
「生き延びるために何をする必要がありましたか?」(どのように脅威へ反応しているのか)

第1章では、この本の目的について次のように書かれています。

心理的・感情的な苦悩は、医学的な病によるものであって、診断と治療が必要なのだと考える現在の主流の捉え方には重大な欠陥があります。皆さんはもうそのことに気がついているかもしれません。多くの人が、そうした考え方は、エビデンスを欠いているばかりか、何の役にも立たず、ダメージを与えるものだと考えています。

もちろん、メンタルヘルスに関する良い実践というものは存在しますし、この本の最後ではそうした例を紹介します。けれども、診断や「医学モデル」的アプローチの限界は大きく、潜在的なリスクがあまりに重大であるために、ますます多くのサービス利用者や専門家たちが、従来の医学的な考え方や実践に完全に代わるような選択肢を求めるようになってきています。この本は、そうした選択肢の一つとして、パワー(Power)・脅威 (Threat)・意味(Meaning)のフレームワーク(PTMF)を紹介します。

専門書ですが、日本語訳が秀逸なので読みやすいです。私たちは、心理的な苦悩に直面している人たちを精神医療につなげるだけで救った気になりがちですが、それは単なる手抜きです。こころの不調には、その人を取り巻く社会の問題が色濃く影を落としているのですから、「普通の人たち」によるPTMFなどの手法を生かした関わりこそが極めて重要なのです。

出版社案内ページ:https://www.kitaohji.com/book/b620327.html

試し読み:https://hanmoto9.tameshiyo.me/9784762832154

翻訳の中心になった東京大学教授の石原孝二さんらが参加し、PTMFを取り上げる日本社会臨床学会(6月11日、藤沢市)

https://sharin.jp/

7月8日には、メアリー・ボイルさんとルーシー・ジョンストンさんが参加するオンラインイベントが予定されています。
下記「PTMF入門」イベントページよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/3607938

それではまた、ケイピー!!