2022年の新規電話相談は約200件、延べ相談数は約700件/不安、怒り、苦しみなど様々な感情に触れた1年/「私のことは私が決めたい」「諦めたくない」という思いを支える

KP事務局の三瓶芙美(精神保健福祉士)です。2022年の1年間にKPでお受けした新規相談は、12月23日時点で194件となりました。電話は28日まで受け付けますので、最終的には200件くらいになりそうです。

相談内容の8割弱は、精神医療を中心とした医療にまつわるもので、相談者の3割強が県外居住者でした。相談者は6割がご本人、4割が家族や関係者でした。

今年の延べ相談件数は、12月23日時点で694件。電話対応の他、精神科病院への面会訪問、在宅ケア会議への同席、オンライン面談などにも取り組みました。また毎月2回、電話相談員が集まるミーティングを開催し、情報共有や支援方法などについて話し合いました。

相談の内容は、おひとりおひとり、みな違います。精神医療の中だけでなく、福祉サービスや行政サービスの中で、または家族関係を含む人間関係の中での、権利侵害や深刻な悩みについて相談される方がいらっしゃいます。不安、怒り、苦しみ、憤りなどの感情に触れることがとても多く、じっくりとお話を伺っています。相談をすることはとても勇気がいることです。KPの相談に辿り着くまでの経緯を思うと、大変だったろうと、労いの気持ちでいっぱいになります。

皆さんの不安の背景には、「知りたい」「確かめたい」「これからどうなるのか分からない」「教えてほしい」という思いが強くあるのを感じます。頼れる人や味方になってくれる人が周囲に居ない、身近な支援者には相談しにくい、相談しても聞いてもらえない、などの理由で孤立している状況が珍しくありません。確かな情報の少なさや、反対にあふれかえる不確かな情報の多さに、迷ったり悩んだりもされています。身近に相談を求めた先で、更なる行き違いや無理解、無関心、冷遇に遭い、重複して傷を負う人もいます。

怒りや苦しみ、憤りの背景には、重大な権利の侵害や制限、暴力被害などがある場合もあります。目の前の出来事や人への不信感をもった方々が、「謝って欲しい」「蔑ろにされたくない」「納得いくまで説明をしてほしい」という気持ちを話してくださります。どの方からも、「私のことは私が決めたい」「諦めたくない」という思いを感じます。そうした思いや、当たり前の権利の主張をお手伝いすることを、大事にしたいと思っています。

そもそも、医療・福祉スタッフとユーザー(利用者)とは、対等ではないのです。私も一市民として実感しますが、主治医や医療・福祉スタッフの方々にはお世話になるので、要望や疑問を何度も述べたり、病状説明を繰り返し求めたりすることには、躊躇しがちになります。

自分や家族の命を預けているので、より全力で最善の医療を提供して欲しいと思うのは当然のことで、すがる思いです。だからこそ、何か関係性が影響して見放されたらどうしよう、治療放棄されたらどうしよう、などと思う気持ちも自然と湧いてきます。そのため、治療方針や待遇に関して不信感を持っていたとしても言い出せませんし、気を遣います。

少ない情報や選択肢の中で、自分で治療やサービスを選ぶのはそもそも難しいことです。そういうユーザー側の心境を理解して、対話をもってくれる医療・福祉スタッフはどれだけいるでしょうか。精神医療や福祉の中では、なおさらに環境や関係性が閉鎖的なために、立場の格差(強弱)が生まれやすいと思います。

私たちは活動(電話相談、メール相談、オンライン面談、病院や家庭への訪問、情報提供やネットワークによる支援)を通して、相談者が、医療・福祉スタッフや家族と公平に語り合える場を作ることが大切だと感じるようになりました。互いによく知り、理解の差を埋め、納得いくまで治療のことや福祉サービスのことについて話し合う機会をつくっていく。簡単なことのようで、時間のかかる大変な作業です。

また、ただ関わるというだけでは、孤立や孤独は埋められないものです。会うこと、話すこと、集まれること、そういう場を持ち続けられることの良さが、私たちKPにはあると思います。その中で、同じ経験をシェアしたり支え合ったりできるピア相談員たちは、大きな存在です。ピア相談員、家族、専門職など様々な人が参加しているKPは、垣根のない職場で居心地がいいです。自分自身の考え方を、個々人がやり取りして議論できます。KPの中にこそ、対話的な空間が営まれていると感じます。

病院などを相手にした相談対応の過程で、気になることがあります。患者さんへの精神保健福祉士の関わりが見えにくいのです。病院の中で、患者さんや家族のそばで権利擁護の役割を果たすべき存在が、今は病院システムや法制度の中で様々な役割を担い、姿が見えぬほどに多忙を極めている現状があると思います。

それでも、長期入院の方の地域移行や、身体拘束・隔離などの行動制限の最小化、強制入院など非自発的な入院に頼りすぎない地域精神医療などを支えるために、現場でなんとかしたいと奮闘されている精神保健福祉士や専門職の仲間が沢山いることも知っています。そうした仲間とも連携し協働しながら、精神医療や福祉の現場を、利用する方々のためのものにしていきたいと思っています。

最後に。「電話の少ない日は平和な日」ではありません。相談の電話が少ないと、かえって心配になります。相談が無いからではなく、ここに辿り着けない声があるだろうと想像するからです。コロナ禍で、病院への訪問活動は今もやや制限されています。KPの存在や活動の内容を、関係者だけではなく、入院されている患者さんや医療・福祉サービスを利用している地域の方に広く知っていただけるよう、活動を続けていきたいと思います。KPを必要とする皆さんと、どこかで繋がれますように。

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全国から相談の電話が相次ぐKP事務局