変わる精神医療制度を考える➂/国会でも注目のKP精神科病院データ本/自民の石田議員が質問で活用/認知症患者を精神科はなぜ強制入院にするのか

今秋の臨時国会での精神医療関連の質疑はまだまだ続きます。11月1日に開かれた参議院厚生労働委員会では、自民党の石田昌宏議員がKP作成の精神科病院データ本「どこに行けばいいの?!」を活用して、質問を行いました。以下、書き起こします。

石田昌宏・参議院議員

大臣、昨日、精神障害者の都内にあるグループホームと、松沢病院を視察に行かれたと、本当にありがとうございます。精神科の医療に関しても様々な課題がありますので、これからも生かしていただいたらと思います。私も精神科の病院で看護師を若いころやっていまして、この領域は非常に関心があります。仕事でとてもチャレンジをさせてもらいましたので、結構楽しく、前向きにできたと。まあ、精神医療が置かれている様々な矛盾というか、なんというか、そういったことに対して、今でもこれでいいのかな、と思うことがたくさんありまして、今日はまずその点について質問させていただきたいと思います。

様々な難しさの中のひとつは、入院形態の問題だと思います。精神科は精神科独自の入院形態を持っていて、任意入院、そもそも入院は入院なのに何で任意入院というのかわからないのですけど、任意入院という形態と、医療保護入院、応急入院、更に措置入院と、様々な、ある意味で強制性を持った入院というのも制度的にあるという難しさがあります。今国会でも、障害者総合支援法案の中で審議があるのではないかと思いますが、まずは医療保護入院についての現状、実態についてご説明いただきたいと思います。

辺見聡・厚生労働省障害保健福祉部長

お答え申し上げます。6月30日時点で行っております医療保護入院患者の数の調査でございますけれども、令和3年の時点で13万940人というふうになっております。この数字は10年前と比較いたしますと、10年前を100とすると118という値になります。また疾患別でみますと、令和3年の数字を申し上げますけれども、症状性を含む器質性精神障害の方が4万5868人、統合失調症、統合失調症型障害、および妄想性障害が令和3年におきましては6万3552人となっているところでございます。

石田議員

医療保護入院はこの20年間で増えてきていますが、その内訳を今ご説明いただきましたけれども、実は20年前は大半が統合失調症の入院でした。それは、今でも多いことは変わらないのですけど、その後、急激に症状性を含む器質性精神障害が増えるというふうになっていますが、ちょっと単純化して言ってしまうと認知症ですね。患者さんがどんどん医療保護入院で増えて、20年前の2倍以上になってきています。まだ統合失調症の患者の方が多いのですけれども、たぶんもうあと何年かすると比率が逆転してきて、医療保護入院の中心が認知症になってくるような傾向を示しているところに、また一つの課題があるんじゃないかと思っています。

横浜にNPО法人さざなみ会という会があって、そこが神奈川精神医療人権センターというのを作っています。今年の8月にそこで、神奈川県内の70の病院、さっきもおっしゃった6月30日の630調査の個票を開示請求したのだと思います。で、各病院の状況についてまとめたデータ本を出しています。それを読むと、いろいろ興味深いことが分かってきて、それについて質問したらキリがないくらいかかるのですが、今日は一点だけに絞らせてもらいます。

その中のデータを見ると、入院患者全員が医療保護入院という病院が結構あるんですね。全員が医療保護入院って、何なんだろうなと思って見ると、そういった病院の(入院患者の)多くが、ほぼ全員が認知症なんですね。認知症の患者さんを医療保護入院にして、病院でみている所が結構あるんですね。これがいいか悪いかというのは、議論するだけの素材がないので置いといたとしても、ここから(いろいろ)見えてきます。

例えば、精神科の病院では、医療保護入院で認知症(の患者)が入っています。それで、症状が同じかどうかはちょっとわかりませんが、他の症状もあるので一緒にしちゃいけないと思いますが、それでも認知症という括りでみると、実際、精神科の病院だけじゃなくて、介護保健の施設、例えば介護老健とか、介護特養も、かなり認知症の方ばかりというのも現実的にはあります。また、医療の方でも身体科の病院で療養病床とか、場合によってはリハビリテーションの病棟とかで、かなり認知症の方が占めている病院もあります。

例えば、そういった介護の施設だと、そこは身体拘束禁止というルールがあり、当然入所は契約のもとに行われます。(身体科の)医療であっても、一定の条件があれば拘束っていうのもあり得るかもしれませんけど、医療保護入院みたいに、ある意味、強制性を持った入院という形態はないわけですね。

一方、精神科の場合は医療保護入院ですから、ある意味、強制性を持った入院をしているわけですよ。そういった所の理由とか区別ってどうなっているのか、ちょっとよくわからない状況です。医療保護入院というのは、なぜ介護保険施設や身体科の病院では存在せずに、精神科だけにあるのかとか、そもそも精神科に入院している認知症患者さんに対して、医療保護入院というのは適切な考えなのか、ということなどが整理し切れていない。これから(整理)しなければならないと思いますけれど、まずそれについてのご見解をよろしくお願いしたいと思います。

辺見部長

認知症を有する患者の中には、知覚や思考、気分または行動の障害が症状として発現し、生活に支障が生じることによりまして、専門医による医療が必要とされる場合がございます。精神科病院につきましては、精神科以外の病院や介護保険施設とは異なりまして、こうした状態にある患者を専門的に受け入れ、必要な入院医療を提供する役割を担っていると考えております。

精神保健福祉法は、精神科病院における入院治療が必要な場合においても、患者自ら意志表示ができない場合であっても、患者の権利擁護に責任を有する(精神保健)指定医が入院治療の必要性を判断するなど、患者の権利擁護に十分配慮することとした医療保護入院制度を設けることによりまして、こうした患者の精神科医療へのアクセスを保証するという制度であると考えております。

石田議員

精神科についてはそういう考えかもしれませんけど、さっきの個票を見てみると逆に、認知症の患者さんがほとんどであっても、ほぼみんなが任意入院という病院もあります。かなり 運用面でもいろいろと現実的な迷いがあるのだと思うのです。今日の話の中だと、介護の話とか、身体科の方の話については局が違うとか担当が違うのでなかなか答えにくかったと思うのですが、そういったものを含めて整理をするというか、思考することが大事ではないかと思います。

正直、私もこうすべきだという回答をまだ持っていないので、これ以上深い議論はなかなかできないのですけれども、明らかにおかしいのではないかというのは感じられると思います。少なくともこれらについて、一体的にどう対応していくべきなのだろうかという議論を厚労省の方でぜひ始めていただきたいと、振りをまずしたいと思います。これはまた今後、議論を深めていければと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

書き起こしは以上です。石田議員の指摘は重要で、同じくらいの症状の認知症患者でも、A病院に行ったAさんは任意入院で治療が行われたのに、B病院に行ったBさんには強制入院(医療保護入院)や身体拘束が行われた、というような納得しがたい差が確かに生じているのです。また、医療保護入院は悪用されるケースが目立っています。高齢の親を医療保護入院させて、家族が財産を奪うケースなどが以前から報告されています。世界的にみてもおかしな制度である医療保護入院は問題だらけなのですが、国はなんとか延命させようとしています。その裏に何があるのか、きちんと検証していく必要があります。

国会でも活用されているKPの精神科病院データ本