強制入院数、隔離数、身体拘束数……/神奈川の全精神科病院の診療実態をWebで一挙公開/8月のシンポ会場で冊子販売を開始

KP神奈川精神医療人権センターは7月1日、2年がかりで開示と集計に取り組んできた県内全精神科病院(精神病床のある総合病院も含む)の診療実態データ(2021年版・70病院)を、Webサイトで一挙公開しました。

厚生労働省が毎年集計する精神保健福祉資料(通称630調査)のデータに基づき、主に2021年6月30日時点での医療保護入院数、措置入院数、隔離数、身体拘束数、診断名ごとの入院患者数、患者の入院期間などを収録しています。8月12日のKP設立2周年記念シンポジウム「良い精神科医はどこにいる?」の会場などKP関連イベントで、このデータを見やすく整理した冊子の販売も行います。

630調査の情報公開を巡っては、神奈川県が当初、「公開拒否」としましたが、KPは「自治体に圧力をかけて公開を阻んでいる」との噂があった日本精神科病院協会の会長、副会長へのインタビューなどを通して、県の対応が誤りであることを示し、全面開示につながりました。

治療成績を積極的に公開する一般診療科と比べ、精神科の治療実績は今も闇に包まれています。根治を目指す手術も、科学的な検査法もない精神科は、診療の良し悪しを測る指標が乏しいためです。医療を名乗る以上、うつ病などの代表的疾患の治癒率、寛解率くらいは出して欲しいものですが、うつ病が改善したことを示すバイオマーカーすらないので、客観的な成績を示せないのです。

ですが、「良い精神科はどこか知りたい」との思いは、全ての患者、家族に共通します。そこで今回、630調査のデータを神奈川県内の病院ごとにリスト化し、公開しました。この調査の主な対象は病院なので、街にあふれる精神科クリニックの情報を入れられなかったのは残念ですが、病院選びの参考資料の第1弾としては十分な内容にできたと考えています。収録した病院の外観写真は全て、KPメンバーが現地に出向いて撮影したオリジナルです。人物が写り込まないように配慮しています。

各病院が得意とする疾患や、入院患者の重症度などには違いがあるので、掲載した数字の多い、少ないだけで病院の良し悪しを判断することはできません。しかし、各病院の診療の傾向を知ることはできます。そこに入院してしまったがゆえに、酷いトラウマを負わされるような間違った選択をしないためにも、この情報を活用してください。

KP神奈川精神医療人権センターWebサイト編集長 佐藤光展