更なる乱用につながる身体拘束要件の改訂に待った!/身体拘束ゼロをめざす院内集会でアピール/「指摘を踏まえ議論」と厚労省

先日告知した「身体拘束ゼロをめざす院内集会」が、3月28日、参議院議員会館(東京・永田町)で開催されました。KPも後援しており、会場とオンラインで多数のメンバーが参加しました。

地方紙が掲載した共同通信の記事によると、厚生労働省はこの集会を受けて、「拘束を限定する方向で基準の見直しを考えており、指摘を踏まえ今後の検討会で議論していただく」との姿勢だそうです。やっと行われる改革が骨抜きや改悪にならないように、しっかり見守っていく必要があります。

集会アピール

本日私たちは、「身体拘束ゼロをめざす院内集会」を開催し、ここに集まりました。

昨年10月、石川県内の精神科病院で5年前に亡くなった大畠一也さん(当時40歳)に対して行われた身体拘束が違法であったとの判断が最高裁で確定しました。

一也さんは入院3日後に隔離され、その後、5名で押さつけて注射しようとした際に抵抗したことを「暴力」とされ、その翌日に興奮や抵抗がないにもかかわらず身体拘束されました。そしてその6日後に身体拘束を解除した直後に肺動脈血栓塞栓症で亡くなりました。

一審の敗訴を経て、違法な身体拘束が認められるまで4年近くの歳月を要したわけですが、このようなことが精神科病院で起きていることは驚きを禁じ得ません。身体拘束の危険性を改めて感じます。

患者さんの尊厳を奪い、時として命さえ奪ってしまう身体拘束はゼロを目指すべきと考えます。

第7回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」では、“隔離・身体的拘束の最小化に係る取組”として“処遇基準告示の見直し等”が掲げられたものの、検討の方向性として示された6個の項目では身体拘束をゼロにする未来像が描けておらず不十分と言わざるを得ません。特に「多動又は不穏が顕著である場合」という身体的拘束の要件を「多動又は不穏が顕著であって、かつ、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合又は検査及び処置等を行うことができない場合」に改訂する提案は論外も甚だしく到底容認はできません。さらに、人員不足によってやむを得ないとする身体拘束が行なわれていることも看過できません。

私たちは、憲法上保障された人身の自由にかかわるこのような基準について、広く国民的議論を行っていく意味においても、第7回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」に示された検討の方向性を撤回して抜本的に身体拘束ゼロを目指すものを出し直すとともに、これで検討が終ってしまわぬよう、身体拘束ゼロを実現するまで実態把握や検討の継続を求めます。

令和4(2022)年3月28日

「身体拘束ゼロをめざす院内集会」参加者一同

KPメンバーらが主催した身体拘束体験会(佐藤光展撮影)