番外編/精神医療を正す強力な援軍現る/東洋経済の風間さんら「ルポ・収容所列島」出版/2700万PVの渾身ネット連載を大幅加筆/KPも登場

精神医療の闇を多様な事例で克明に描き、2700万PVを集めたインターネット連載(東洋経済オンライン「精神医療を問う」)を大幅加筆した本「ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う」(東洋経済新報社、税別1600円)が、今月出版されました。著者は、同社調査報道部の風間直樹さん、井艸恵美さん、辻麻梨子さんの3人。私のコメントやKPも登場します。

精神医療の暗部を容赦なくえぐると、あまりにも酷すぎて現代日本の出来事とは思えず、告発した記者の方が嘘つき呼ばわりされがちです。私もよく「膨らまし過ぎ」「でっちあげ」「患者の妄想に振り回されている」だとか、「精神医療が大嫌いなカルト信者」だとか、陰でさんざん言われました。講談社から「精神医療ダークサイド」や「なぜ、日本の精神医療は暴走するのか」を出した時も、書評で取り上げてくれるメディアは多くありませんでした。この領域に踏み込むと、記者も孤立を強いられるのです。

そのような状況の中、「なぜ、日本の精神医療は暴走するのか」を出版した際に、私の著者インタビューを誌面で大きく取り上げてくれたのが、東洋経済新報社(週刊東洋経済2019年2/9号)でした。ほぼ同時期に、私が関わっていたワセダクロニクル(現・Tansa)の活動で風間さんら3人と知り合い、精神医療の酷さについて情報交換しました。薬の取材などを通して精神医療に違和感を抱いていた風間さんたちは、緻密な取材に基づくインターネット連載を始めることを決め、2020年1月に「精神医療を問う」をスタートさせました。

記者やジャーナリストは数多くいますが、精神医療の闇に踏み込む人は稀です。先にもふれたように、全精力を注いで取材しても顕著な成果につながりにくく、この薄情な社会の動きも鈍くて、明らかに「割に合わない仕事」だからです。私は風間さんたちとの初期の会話の中で、そのような話もしました。しかし、彼らが怯むことはありませんでした。私は数少ない味方を得た思いで、嬉しくなりました。

「精神医療を問う」は、雑誌系でトップクラスのアクセス数を誇る東洋経済オンラインの中でも、特に注目される連載になりました。しかし同時に、転載したYahoo!ニュースのコメント欄はおぞましい書き込みで埋め尽くされました。精神疾患の患者たちを時に犬猫以下の扱いにする、この狂った国を支える国民たちが、本性をさらしたのです。思考や認知が歪んでいるのは、こうしたコメント主の方なのですが、彼らこそ病識がないのでしょう。

先月24日、プーチン率いるロシアがウクライナに戦争を仕掛けました。ロシアはとんでもない屁理屈を弄して、加害行為を正当化しようとしています。ブラック精神科医やブラック精神科病院が、明らかなミスや過失を帳消しにするために弄する屁理屈も、このロシア級のとんでもなさです。

どのような診療科でもミスをゼロにすることはできませんが、起きてしまったミスをしっかり検証して再発を防ぐのが現代医療です。しかし、ブラック精神科医はミスに向き合おうとせず、何でもかんでも患者のせいにして幕引きを図るので、ミスどころか人権侵害も一向に減りません。そして行政機関の怠慢や事なかれ主義によって、患者たちの不幸は無かったことにされます。

私は個人的には精神医療に何の恨みもなく、正義感が人一倍強いわけでもありませんが、こうした異様過ぎる事態がまかり通るのは普通の人間として許せず、様々な告発記事を書いてきました。それは、ノンストップのモグラ叩きのような果てしない持久戦ですが、今回、東洋経済という強力な援軍が加わってくれたのは心強い限りです。昨年秋、日本弁護士連合会の「人権擁護大会」が半世紀ぶりに精神医療を取り上げ、強制入院制度の早期廃止を求める決議を採択するなど、風向きは少しずつ変わり始めています。

風間さんには昨年夏、KP設立1周年記念シンポジウム「TALK BACK 私たちはもう黙っていない」で急遽登壇してもらいましたが、今後も連携を図っていきます。「ルポ・収容所列島」を多くの人が読み、虚言まみれの「ロシア」側ではなく、こちら側の陣営に加わっていただけることを願っています。

KPも登場する風間記者らの「ルポ・収容所列島」(東洋経済新報社)