住民軽視の過剰な忖度に「待った!」/埼玉の審査会が「隔離拘束数の不開示は妥当でない」と県に答申/630調査の開示請求で

編集長の佐藤です。個々の精神科病院の診療実績が分かる630調査の開示請求で、2019年の各病院の隔離・身体拘束数を不開示にした埼玉県に対して、埼玉県精神医療人権センターのメンバーが行った審査請求の答申内容が判明しました。審査を行った埼玉県の情報公開審査会は「不開示としたことは妥当ではなく、取り消すべき」とし、隔離・身体拘束数も開示することを求めました。

埼玉県は、不開示の理由を「法人その他の団体に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがある」としていました。同審査会の意見聴取の際にも「本件不開示情報が公にされ、隔離や身体拘束が行われている患者の人数が多い、少ないという情報だけで病院の良し悪しが判断されることになれば、医療機関の正当な利益が害されるおそれがある」などと説明したようです。

この主張でもわかる通り、埼玉県は、県民が適切な精神医療を受けるために大事な情報の提供よりも、精神科病院の利益を優先したのです。医療法が「国及び地方公共団体は、医療を受ける者が病院、診療所又は助産所の選択に関して必要な情報を容易に得られるように、必要な措置を講ずるよう努めなければならない」(第六条の二)などと定めているにも関わらず、このような判断をしたのですから、精神科病院への忖度は相当なものです。いかがわしい接待でも受けているかのようです。

もちろん、こんな判断が認められるはずはありません。同審査会は「(隔離・身体拘束数が公にされることで)当該医療機関が何らかの評価を受ける可能性があるとしても、当該医療機関の事業運営に支障が生じるほどの法的保護に値する蓋然性があるとまでは言えない」「法人の事業運営に支障が生じ、競争上の地位、その他正当な利益が害されるおそれがあるとは認められない」などとし、不開示決定の取り消しを求めました。

日本精神科病院協会の山崎學会長らも、先般の私のインタビューで「(患者個人が特定される情報でなければ)開示されても別に問題はありませんよ。秘密にするようなものでも何でもないので」(KPめんちゃれ探偵団や精神医療ルネッサンスで詳報)と断言しているのですから、埼玉県の判断は、まさに大きなお世話なのです。この答申を受けた埼玉県が、県民の側を向いた適切な裁決をすることを期待しています。

しかし、隔離・身体拘束数以外は当初から開示した埼玉県よりも、はるかに悪質な自治体があります。埼玉県精神医療人権センターの開示請求に対して、黒塗り一色の「のり弁当」を返して来た、さいたま市です。同市に対しても、埼玉県精神医療人権センターが審査請求を行い、答申を待っています。(2020年12月25日付のKPめんちゃれ探偵団で「のり弁当」を詳報)

また、KPの開示請求に対して、さいたま市級のとんでもない切り返しをした神奈川県と3政令市(横浜・川崎・相模原)の対応の近況も、後日報告します。

埼玉県による隔離・身体拘束の不開示は「妥当ではない」とした情報公開審査会の答申