不適切な身体拘束で精神科病院に警告書/神奈川県弁護士会

編集長の佐藤です。KPの電話相談には、「不当な身体拘束を受けた」という訴えが全国から寄せられています。カルテには「落ち着いている」と書いてあるのに、いきなり身体拘束されて、漫然と続く。日本の精神科病院では、それが日常的な光景となっています。

KPと協力関係にある神奈川県弁護士会(二川裕之会長)は、9月8日、県内の精神科病院C病院(警告書の記載通りC病院とします)に警告書を送りました。40代の男性入院患者に対して、2017年夏、不適切な身体拘束を25日間(一時的な解除あり)に渡って漫然と続けたとのことです。

警告書は「かかる処遇は、申立人の身体を極めて長期間にわたり不当に拘束するものであり、憲法13条、18条、22条1項、31条以下、及び国際人権規約B規約で認められる身体拘束をされない権利を著しく侵害するものである。したがって、今後は不当に身体拘束を行うことがないよう、警告する」と書いています。

身体拘束は違法行為です。ですが、そのまま放置すると患者の生命に危険が生じる恐れがある場合や、取り返しがつかないほどの病状悪化が想定される場合に限って、例外的に違法性が阻却され、精神保健指定医の判断で身体拘束を一時的に行うことができます。

誤解されがちですが、他害行為の恐れだけでは身体拘束はできません。隔離をすれば防げるからです。ところが日本の精神科病院では、自傷行為はなく診察室で暴れてもいないのに、「暴れる恐れがある」などとして、患者を縛り付ける違法行為が頻発しています。そして、患者たちの心に医療への不信感や恐怖を植え付け、治療とは真逆の深いトラウマを負わせています。

なぜ、暴力的な身体拘束を乱発するのでしょうか。精神科病院の関係者は「精神科特例のせいでスタッフが足らないから」などと釈明しますが、それだけではなく、患者を「黙らせる」「心を挫く」という懲罰的発想が裏にあるように思えてなりません。

KPは、声を上げる患者たちを応援します。不当な身体拘束をされた場合は、行政機関のみならず、地元弁護士会の人権擁護委員会にも相談してください。この社会は実に薄情ですが、多くの被害者が次々と声を上げることで、少しは変わるかもしれません。

今回の警告書(調査報告書を含め計19枚)は、神奈川県弁護士会のWebサイトにある「人権救済勧告等一覧」(2021年10月4日更新)で見ることができます。

神奈川県弁護士会がC病院に送った警告書