なぜみんな、うつむいて歩くのだろう?/上司はウソをついたのか、知らなかったのか

みなさん、こんにピア!!

最近、スッキリしないニュースが多くありませんか。長引くコロナ禍でも、市民が知りたい情報がしっかり伝えられているとは思えません。多くの人が苛立ちを募らせています。

正しい情報を得られないことによる苦しさは、精神疾患を持つ人の多くが、病院や家庭で味わってきました。今回は、KPちゃんが横浜の生活支援センターで働いていた時に、上司に対して抱いた不信感について書きたいと思います。

当時、障害者雇用で働いていたKPちゃんは、夕方の退勤時に、生活支援センターの夕食サービスを利用する方々とすれ違うことがよくありました。

その時には会釈をしたり、声がけをしたりするのですが、真下を見るくらいうつむいて歩く年配の方が複数いて、挨拶をしても全く気付かれないことがよくありました。

KPちゃんはその頃、ピアスタッフとしての勉強を始めたばかりで、知らない事だらけでした。そのため、「年配の方々は偏見と差別まみれの時代を過ごした結果、うつむいて歩くようになってしまったのだ」と勝手に思い込み、同情していました。

そんなある日、KPちゃんは上司にこの話をしました。すると上司は笑いながら「かがんで下からのぞき込んで、手を振らないと気付かれないですよ」と語りました。KPちゃんは、なおのこと気の毒になり、その日以降は、利用する方の目線までかがんで挨拶をするようになりました。

それから数年後、KPちゃんは退職してYPS横浜ピアスタッフ協会の活動に専念し、様々な方と出会いました。そこで、精神科における悲惨な状況を知ることになりました。

当時は読売新聞の記者だった佐藤編集長とも出会いました。そして、著書「精神医療ダークサイド」を読み、とんでもない事実に気付きました。長期的、もしくは大量に向精神薬を服用していると、人によっては極端に首が曲がる副作用(痙性斜頸)が表れるという記述があったのです。

生活支援センターの近くですれ違っていた年配の方々も、向精神薬を長期かつ多量に服用した影響で痙性斜頸が起こり、治らなくなってしまったのでしょう。KPちゃんはこのことを知って以来、ある種の恐怖を抱くようになりました。

少なくとも上司は、ベテランの精神保健福祉士ですから、この事実をKPちゃんに教えて欲しかったと思うのです。しかし、もし上司がこの事実を知らずに、本当に冗談めかして話したのであれば、それはもっと怖いことです。

この国の精神科医療には、かなりの当たり外れがあることは実感していましたが、地域生活に必要な精神保健福祉にも、当たり外れがあるのだと気付きました。今、安心して地域生活を送れている方々は、運が良かっただけなのです。医療にも福祉にも、当たりはずれなどという理不尽は、あってはならないことだと思います。

長期入院の方々の地域移行を推進することは大切ですが、支援者は医者の言いなりになるのではなく、ひとりひとりの人生を充実させるために存在することを、今以上に自覚してほしいと思います。

今回のKPちゃんは、YPS横浜ピアスタッフ協会の副会長、野間慎太郎が担当しました。

それではまた、ケイピー!!

YPS横浜ピアスタッフ協会副会長の野間慎太郎(写真撮影 KP会長・藤井哲也)