KPは27年前にもあったの!? /様々な思いや歴史を経て「人権センターニュース」にKP登場

神奈川精神医療人権センターは、27年前に既に存在したのをご存知ですか。もちろん、KPとは別の組織です。1994年に設立され、98年まで続きました。

わずか4年という短い活動期間でしたが、優秀な弁護士らもメンバーとなり、精神科病院内での患者死亡問題で、支援した遺族が民事裁判で勝訴するなど画期的な成果を挙げました。当時、中心メンバーだったソーシャルワーカーの広瀬隆士さんは今、KPメンバーとなって相談対応などに力を発揮しています。その旧神奈川精神医療人権センターの活動の一部は、社団法人神奈川人権センター(現在は一般社団法人)に引き継がれました。

そして今年6月、同センターが発行する「人権センターニュース」の348号に、KPの事務担当・濱田唯さんが書いたKP紹介文が掲載されました。いろいろな歴史や思いが、KPにつながっています。同センターから全文転載の許可を頂きましたので、ご紹介します。

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神奈川精神医療人権センターについて

濱田 唯

こんにちは!神奈川精神医療人権センター(KP)です。多くのピアが参加している団体なので、Kanagawa Peers(神奈川のピアたち)の略で、KPと呼ばれています。KPと呼んでいただければ嬉しいです。

日本で精神疾患をお持ちの方は、約410万人いるといわれています(平成29年患者調査)。そのうち精神科病院に入院している人は約30万人。大変多くの方が入院治療をされています。皆さんは、日本の精神科病院の入院日数が、世界的に見て非常に長期間だということをご存知でしょうか。厚生労働省の資料では、2014年の日本の平均在院日数は280日であり、例えばベルギー(10.1日)やイギリス(42.3日)よりも非常に長い数字になっています。

一度入院すると、なかなか退院することが難しい。相談できる人を見つけるのが難しい。退院しても、大変なことがたくさんあって、また入院してしまった。私たちは、そんなお話をよく聞いてきました。「私たちに、できることはないかな?」という気持ちと共に、KPは活動を開始しました。精神医療に悩みを持つ人たちの相談できる場所となり、そして精神医療の問題を、より多くの人に知ってもらうことを目的としています。

<発足の経緯>

KPは2020年5月16日、横浜市磯子区を拠点に発足しました。精神医療の問題を告発してきたジャーナリストの佐藤光展さんが、2019年春の講演で「患者が揃って声を挙げなければ何も変わらない」と語るのを聞いたYPS横浜ピアスタッフ協会のメンバーたちが、組織化の必要性を痛感し、大阪精神医療人権センターの見学などを経て、準備会を開きました。多くの精神障害当事者、支援職、家族、弁護士、ジャーナリストや医療関係者が集まり、KPは形になっていきました。

発足時には、クラウドファンディングを実施。大きなご支援をいただき、活動を前に進めることができました。電話相談を平日13時から16時まで実施。相談者に会うため、病院や神奈川県外にも足を運びました。今年の5月で発足から1年経ちましたが、相談件数は130件にのぼります。まだまだ、誰にも相談できずに困っている人たちがいると確信しています。

<理念>

そんな私たちが大切にしていることは、ピアの力で精神医療にかかる方々の権利擁護や、精神科病院を開かれたものにするということです。発足当初、私たちはその理念を「扉を開こう」と掲げましたが、活動を続けていく中で、「扉をぶっこわす」や「扉をぶち破る」という表現になりつつあります(笑)。精神障害当事者は、守られるだけの存在ではありません。私たちには力があり、能力があり、社会を変える大きなムーブメントを起こすことができるのです。その力強さを、理念に取り込みながら、私たちは団体として大きくなっていっています。

<活動内容>

主な活動は3つあります。1つ目は電話相談です。平日13時から16時に、電話相談ボランティアが電話の前で待機しています。相談内容は様々で、精神科病院に入院中の方から公衆電話を使ってかかってくることもあれば、ご家族のことで電話をいただくこともあります。ホームページを見て、「過去に経験したあれは、人権侵害だったのではないか?」とご連絡いただく場合もあります。一つ一つの相談をKP内部で検討して、私たちができることをお伝えしています。必要がある時は弁護士に相談したり、他の県の精神医療人権センターに依頼したりする時もあります。(現在、大阪、兵庫、埼玉、神奈川にセンターがあります。)

2つ目は、講演会やイベントを通しての普及啓発です。兵庫精神医療人権センターの方を横浜に招いて、神出病院事件の話を聞いたり、杏林大学の長谷川利夫教授と共に「身体拘束を体験する会」を開催したりしました。昨年12月には、精神科医で劇作家の、くるみざわしんさん作、演劇「私、精神科医編」を上演。くるみざわさん、俳優の土屋良太さんと、KPメンバーでシンポジウムを行い、精神医療について語りながら、KP発足から12月までの中間報告も行いました。今年に入って、毎月1回「OUTBACKアクターズスクール」を開校。ワークショップを通して演劇作品を制作中です。ここでは、参加者が感じた辛い経験もエネルギーにして、メッセージとして作品に込めていきます。

今後は、認知行動療法第一人者の大野裕先生を迎えての講演会(7月3日開催)、不当な長期入院を強いられたとして国賠訴訟の原告となった伊藤時男さんとのシンポジウム+くるみざわしん「精神科病院つばき荘」上演(8月7日開催)を予定しています。それ以外にもたくさんのイベントを企画しておりますので、もしご興味がある方はご連絡いただければ嬉しく思います。

3つ目は、これらのイベントや精神医療の問題についてもっと多くの人に知ってもらうための、情報発信です。私たちのホームページ(kp-jinken.org)では、日々の活動報告から、精神医療に関するニュースの紹介、イベントの案内、そして精神医療に関する調査報告など、バラエティに富んだ内容を日々発信し、アクセス数が右肩上がりとなっています。

最後になりましたが、この度、会費制度を始めましたのでご案内させていただきます。KPの活動は、現在助成金と寄付で支えられていますが、より活動を前へ進めるために「KPサポーター会員制度」を始めました。個人サポーターは年会費5000円。法人サポーターは30000円。ご支援いただける場合は、KP事務局(045-353-5711)までご連絡ください。ありがとうございました。

旧神奈川精神医療人権センターが発行していた広報物や新聞掲載記事
KPの記事が掲載された神奈川人権センター発行の「人権センターニュース」