医療観察法病棟でも大事なのは「人薬」/KP勉強会で看護師の及川さんからクライシスプランを学ぶ

KPの相談活動ボランティアで、看護師や大学教員でもある及川江利奈さんから、臨床現場で実践してきたクライシスプランなどを学ぶKP勉強会を3月24日に開催しました。

及川さんは、東京都立松沢病院や国立精神神経医療研究センター病院などでの勤務を経て、現在は国際医療福祉大学で教鞭をとっています。東京の大学院にも席を置き、精神医療と人権についての研究をされています。

今回の勉強会のテーマは、「クライシスプラン〜医療観察法医療の実践から学んだこと〜」。及川さんは、同研究センター病院の医療観察法病棟での勤務経験があります。医療観察法病棟は精神医療の中でも特殊で、なかなか実態を知ることができないので、とても貴重な機会となりました。

医療観察法病棟では、スタッフの配置が通常の精神科病棟よりも手厚く、同研究センター病院では、「再犯率や再入院率を低くする成果を出している」といいます。民間精神科病院などで横行する身体拘束はほとんど行わず、「年間1人いるかいないか」とのことです。

「大きな問題を起こした人に、多額の金をかけて手厚い医療を提供するのはいかがなものか」という意見もあるでしょう。医療観察法は、他にも様々な問題を指摘されています。ですが、経験を積んだスタッフが手厚い人員でケアに当たれば、重い精神疾患の人たちも回復していく可能性が高いことを、及川さんたちの実践例は示しているように思います。

その医療観察法病棟から広がり始めたのが、クライシスプランです。患者がクライシス(危機的状況)に陥る前にできること、陥ってしまった時にどうするかなど、クライシスを段階的に捉えて対処できるように、本人と医療者が一緒にプランを立てます。ひとりひとりに時間をかけて向き合わないとできることではありません。

及川さんが治療でもっとも大事だと考えているのは、「(医療者と患者が)人としてしっかり向き合うこと」。病状の重い人ばかりが入院する医療観察法病棟でも、そうした「人薬(ひとぐすり)」の効果が実証されているのは、とても興味深いことだと思いました。

日本の精神科医療は「薄利多売」に甘んじて、人を人とも思わない雑なサービスの提供に終始してきました。医療観察法病棟での成果は、精神保健福祉法に基づく精神科病棟にも、早急に還元されなければなりません。