2020.1.7. 最終更新

各項目に「データを読み解くポイント」を追記しました!

 本ページでは、2004年以降「630調査」のデータなどに基づき、日本の精神科医療の現状をまとめています。日本では、世界に比べて精神科患者の入院率が高く、その入院期間も長いといえます。中でも、医療保護入院と措置入院という強制入院の多さが問題視されています。
 参照した資料についての詳しい情報は表の下にある「参考データ」をご参照ください。

全国の精神科病院在院患者総数

全国の精神科病院在院患者数は全体として減少していますが、入院形態別の患者数に注目すると、減少しているのは任意入院患者数がほとんどであり、医療保護入院患者数は緩やかに増加しています。

入院患者数

入院形態別

※以上の数に「その他の入院」と「不明」を足した数が合計の入院患者数となる

データを読み解くポイント①

なぜ強制入院が増加し、任意入院が減少しているのだろう?

 

医療保護入院とは、精神保健福祉法に基づき、

  • 精神保健指定医1名の診察の結果、入院が必要と認められ、
  • 家族等(配偶者/親権を行う者/扶養義務者/後見人/保佐人)の同意があり、
  • 任意入院が行われる状態にないと判定された精神障害者

を入院させる入院形態で、患者本人の同意がない場合でも、家族等の同意によって当事者を入院させることができる、強制入院の一種です。

 

一方で、任意入院とは、患者本人の同意に基づいて行われる入院形態です。原則として、開放病棟処遇であり、本人の意思で退院することが可能です。

 

ここ20年弱のあいだに、任意入院患者数が増加し、医療保護入院患者数が増加しているのはなぜなのでしょうか?

急性期で混乱が著しく、患者本人による同意が困難なケースにおいても、本人の人権を最大限尊重し、納得と同意に基づいた入院が増えるよう、根本的な医療・福祉支援体制の改革が求められています。

全国の精神科病院在院期間

入院患者全体のうち、半数以上が1年以上の長期入院患者です。

在院期間が10年以上の入院患者の多くは高齢化しており、その退院理由のほとんどは「死亡」によるものです。10年以上の長期入院者が減少しているのは、病院内で死亡する患者が増えていることを表しています。一方で、10年未満の入院者の数は横ばいになっています。

入院期間の推移

データを読み解くポイント

なぜ1年以上の長期入院者の数は一定なのだろう?

 

長期入院者とは、1年以上入院している患者を指します。
また、症状が回復しており、入院治療の必要がないにも関わらず継続して行われる入院は社会的入院と呼ばれます。
2019年時点で、全国の精神科病院の入院患者の半分以上が長期入院者となっており、そのほとんどが65歳以上の高齢者となっています。

 

厚生労働省(2014)の報告によると、入院が長期化するにつれ、地域に退院するケースの割合は減少します。

  1. 入院期間が1年未満の患者の71.4%の退院理由が「家庭復帰」であるのに対して、
  2. 入院期間が1〜5年の長期入院者の退院理由は「転院・院内転科」(34.9%)と「死亡」(19.9%)が半分以上を占めています。
  3. さらに、5年以上の長期入院者の退院理由は、半数近い48.6%が「転院・院内転科」、27.6%が「死亡」となっています。

入院が長期化するにつれて、就労や一人暮らしなどの社会復帰は困難になるとされています。そのため、1年未満での退院を促進することが、スムーズな社会復帰において重要となります。

 

しかし、なぜ1年以上の長期入院者の数は減少していないのでしょうか?

入院の短期化のためには、退院しやすい地域社会が必要不可欠です。入院経験のある方の人権が尊重され、暮らしやすく、働きやすい社会が実現されるよう、取り組まなくてはなりません。

 

参考:厚生労働省. (2014). 第8回 精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会『長期入院精神障害者をめぐる現状』.

全国の保護室隔離・身体拘束の患者数

保護室への隔離措置と身体拘束の数は共に増加しており、身体拘束数は10年で2倍以上に増加しています。

※2017年以降は「630調査」におけるデータが不足しているため、不明

データを読み解くポイント③

なぜ身体拘束の件数は倍増したのだろう?

 

身体拘束とは、患者の身体の一部または全身をひもや抑制帯、ミトン、ヘッドギアなどを用いて固定し、自由な動きを制限することです。必ず指定医の指示のもと行い、記録を残すよう定められているほか、

  • 行動を制限しなくては患者本人の生命および身体が危険にさらされるという「切迫性」
  • 行動を制限する以外に患者の安全を確保する方法がないという「非代替性」
  • 短期の間に処遇を切り替えることを前提としているという「一時性」

が身体拘束処遇を適用する際の要件となっています。

 

しかし、患者の身体をベッドに固定し、一切起き上がれなくする場合もあり、身体拘束の経験がトラウマとなっている当事者も多く存在します。身体拘束が本当に適切な処置なのか疑問視される場合も多いのです。

 

なぜ、それでも身体拘束の件数は増加しているのでしょうか?

そこには医師不足、看護師不足など、医療現場での困難もあるかもしれません。まずは精神科医療に関わる医師、看護師などと当事者とのコミュニケーションを活発化させ、お互いの人権が侵害されない精神科医療の方法について具体的に考えていかなくてはなりません。

 

参考資料

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (n.d.)
『2004-2016年度精神保健福祉資料』「精神保健福祉資料[630]」(https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/630/, 2020.7.5.参照).
※630調査とは 精神科病院、精神科診療所および訪問看護ステーションを利用する患者の実態を把握し、精神保健福祉施策推進のための資料を得ることを目的に、毎年6月30日付で厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課が実施している調査である。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (n.d.)
『2017-2019年度精神保健福祉資料』「630集計:従来フォーマットでの集計」(https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/keyword.html, 2020.7.5.参照).

厚生労働省政策統括官付参事官付保健統計室 (2019.3.31)
『2005-2017年度患者調査:統計表』「厚生労働省」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html, 2020.7.5.参照).
※2020年度の結果の確定数は2022年2月下旬に公表

 

データのダウンロード

本ページで公開されているデータは以下よりダウンロードいただけます。

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